脱水は、体内の水分が不足し、循環血液量や細胞内外液の恒常性が損なわれた状態である。嘔吐、下痢、発熱、発汗、多尿、摂取不足などで生じ、重症化するとショック、急性腎障害、意識障害を来す。
身体徴候
脱水(dehydration)は、水分摂取不足や体液喪失によって体内水分量が減少した状態であり、細胞外液量減少(volume depletion)と自由水欠乏(water deficit)の両面から評価する必要がある。原因には飲水不足、嘔吐、下痢、発熱、発汗、多尿(糖尿病・尿崩症)、利尿薬、出血などがある。循環血液量が減少すると交感神経系、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)、抗利尿ホルモン(ADH)が活性化し、頻脈、末梢血管収縮、尿量減少を引き起こす。自由水喪失が主体では高ナトリウム血症(高張性脱水)、Na喪失が主体では低ナトリウム血症(低張性脱水)、水とNaがほぼ同程度失われる場合は等張性脱水となる。
飲水量、食事摂取量、嘔吐、下痢、発熱、発汗、多尿、尿量、体重変化、利尿薬やSGLT2阻害薬などの服薬歴を確認する。身体診察では口腔・舌・口唇の乾燥、腋窩乾燥、眼球陥凹、皮膚ツルゴール低下、毛細血管再充満時間(CRT)、末梢冷感、頻脈、起立性低血圧、尿量減少を評価する。高齢者では皮膚ツルゴールは加齢の影響を受けるため診断価値が低く、体重変化、尿量、血圧、意識状態を重視する。検査では血清Na、K、BUN、Cr、BUN/Cr比、血漿浸透圧、尿比重、尿浸透圧、尿Naなどを組み合わせて評価する。
単なる口腔乾燥は抗コリン薬、口呼吸、Sjögren症候群、放射線治療後などでも生じるが、脱水では体重減少、頻脈、尿量減少、起立性低血圧など循環血液量減少所見を伴う。高張性脱水では口渇、神経症状、意識障害が目立ちやすく、低張性脱水では循環不全や筋痙攣を来しやすい。心不全や肝硬変、ネフローゼ症候群では浮腫を伴っていても有効循環血液量が低下していることがあり、見かけ上の体液過剰と循環血液量減少を区別する必要がある。
意識障害、著明な低血圧、頻脈、乏尿・無尿、冷汗、末梢冷感、毛細血管再充満時間延長、乳酸上昇を伴う場合は循環血液量減少性ショックを疑い、直ちに輸液蘇生を開始する。高度高ナトリウム血症や重度低ナトリウム血症、急性腎障害、持続する嘔吐・下痢、敗血症を伴う脱水では救急対応が必要である。
脱水では『細胞外液量減少』と『自由水欠乏』を区別して評価することが重要である。『頻脈・起立性低血圧・乏尿』は循環血液量減少を示唆する代表所見である。『高張性脱水=高Na血症・口渇・神経症状』『低張性脱水=低Na血症・循環不全』『等張性脱水=細胞外液量減少』を整理して覚える。高齢者では口渇を訴えにくく、皮膚ツルゴールも参考になりにくいため、体重変化、尿量、意識状態、BUN/Cr比などを重視する。国家試験・CBTでは脱水の分類、輸液選択、起立性低血圧との関連、ショックへの進展が頻出事項である。
医学部生・医療系学生による編集チーム。CBT・国家試験対策・学習効率化に関する実体験と医学教育知見に基づいた情報を発信。
都内私立大学医学部卒業。現在は都内基幹病院にて初期研修中。学生時代はCBT・国試対策に注力し、学習法に関する情報発信にも関心を持つ。