頻呼吸は、年齢や状況に対して呼吸数が増加した状態である。発熱、低酸素血症、代謝性アシドーシス、肺疾患、心不全、疼痛、不安などでみられ、重症化の早期徴候となる。
身体徴候
頻呼吸(tachypnea)は、低酸素血症、高二酸化炭素血症、代謝性アシドーシス、発熱、疼痛、敗血症、交感神経亢進などにより呼吸中枢が刺激され、分時換気量を増加させるために呼吸数が増加した状態である。末梢化学受容器(頸動脈小体・大動脈小体)は低酸素血症を、中枢化学受容器はPaCO2上昇や脳脊髄液pH低下を感知して換気を促進する。肺炎、肺水腫、肺塞栓症、間質性肺疾患ではガス交換障害を代償するため呼吸数が増加する。代謝性アシドーシスでは酸塩基平衡を補正するため深大呼吸(Kussmaul呼吸)を呈することがある。呼吸筋疲労が進行すると、頻呼吸から浅速呼吸、さらに徐呼吸へ移行し、呼吸不全の終末像となる。
患者に呼吸を意識させないよう安静時の胸腹部運動を観察し、1分間の呼吸数を測定する。成人では一般に20回/分以上を頻呼吸とする。呼吸数だけでなく、呼吸の深さ、規則性、努力呼吸、呼吸補助筋使用、鼻翼呼吸、陥没呼吸、起坐呼吸、会話可能性を同時に評価する。発熱、咳嗽、喀痰、胸痛、喘鳴、呼吸困難、下腿浮腫、疼痛、不安、外傷歴を確認し、SpO2、血圧、脈拍、体温、意識状態、呼吸音を評価する。必要に応じて動脈血ガス分析、胸部X線・CT、血液検査(CRP、乳酸、Dダイマーなど)、心電図を実施する。
発熱や疼痛による頻呼吸は原因の改善とともに速やかに軽快することが多い。肺炎では発熱、咳嗽、湿性ラ音、肺水腫では起坐呼吸、湿性ラ音、下腿浮腫を伴う。肺塞栓症では突然の呼吸困難、胸痛、頻呼吸が特徴である。代謝性アシドーシスでは深く大きなKussmaul呼吸を認める。過換気症候群では呼吸数増加に加え、口周囲のしびれ、四肢のテタニー、手指硬直を伴うことが多い。COPD急性増悪では頻呼吸に加え、呼気延長や喘鳴を認める。
著明な頻呼吸に意識障害、会話困難、チアノーゼ、SpO2低下、低血圧、胸痛、片側呼吸音消失、吸気性喘鳴、呼吸補助筋使用を伴う場合は、急性呼吸不全、肺血栓塞栓症、緊張性気胸、急性肺水腫、上気道閉塞、敗血症など生命を脅かす病態を疑う。頻呼吸の後に呼吸数が減少してきた場合は呼吸筋疲労や中枢抑制による呼吸停止前兆の可能性があり、緊急対応が必要である。
頻呼吸は『最も早期に変化するバイタルサイン』の一つであり、呼吸不全や敗血症の重要な初期徴候である。『低酸素血症』『代謝性アシドーシス』『敗血症』『肺塞栓症』『肺炎』を代表的原因として整理する。『Kussmaul呼吸=代謝性アシドーシス』『Cheyne-Stokes呼吸=心不全・中枢神経障害』『Biot呼吸=延髄障害』との鑑別も重要である。国家試験・CBTでは、呼吸数はSpO2より早く異常を示すことがあり、呼吸数・呼吸様式・SpO2・意識状態を組み合わせて重症度を判断することが頻出事項である。
医学部生・医療系学生による編集チーム。CBT・国家試験対策・学習効率化に関する実体験と医学教育知見に基づいた情報を発信。
都内私立大学医学部卒業。現在は都内基幹病院にて初期研修中。学生時代はCBT・国試対策に注力し、学習法に関する情報発信にも関心を持つ。