低酸素血症は、動脈血中の酸素分圧が低下した状態である。換気血流比不均衡、シャント、拡散障害、低換気、吸入酸素分圧低下などで生じ、重症では臓器障害を引き起こす。
身体徴候
低酸素血症(hypoxemia)は動脈血酸素分圧(PaO2)の低下を指し、1肺胞低換気、2換気血流比(V/Q)不均衡、3右左シャント、4肺胞・毛細血管間の拡散障害、5吸入酸素分圧低下(高地など)の5つが主要な機序である。最も頻度が高いのはV/Q不均衡であり、肺炎、COPD、喘息、肺塞栓症などでみられる。右左シャントでは換気されない肺胞を通過した血液が動脈血へ流入するため酸素投与への反応が乏しい。肺胞低換気ではPaCO2が上昇しやすく、A-aDO2は正常であることが多い。なお、組織への酸素供給(DO2)はPaO2だけでなく、ヘモグロビン濃度、酸素飽和度(SaO2)、心拍出量によって規定されるため、低酸素血症と組織低酸素症(hypoxia)は必ずしも一致しない。
まずSpO2を測定し、酸素投与の有無と投与条件(室内気・酸素流量・FiO2)を必ず記録する。SpO2が低値である場合や臨床像と一致しない場合、重症例では動脈血ガス分析(ABG)を行い、PaO2、PaCO2、pH、HCO3-、A-aDO2を評価する。呼吸数、努力呼吸、呼吸補助筋使用、意識状態、チアノーゼ、胸痛、発熱、喘鳴、呼吸音左右差を確認し、胸部X線・CT、心電図、血液検査(血算、CRP、BNP、Dダイマーなど)を組み合わせて原因を鑑別する。必要に応じて心エコーやCT肺動脈造影も検討する。
肺胞低換気ではPaCO2が上昇し、A-aDO2は正常であることが多い。換気血流比不均衡は最も頻度が高く、酸素投与で改善しやすい。右左シャントは高濃度酸素投与でも改善しにくいことが特徴である。拡散障害は間質性肺炎などで運動時に悪化しやすい。高地では吸入酸素分圧低下が原因となる。貧血ではPaO2・SpO2が正常でも酸素運搬能が低下し組織低酸素を来す。一酸化炭素(CO)中毒ではPaO2は正常でもCOHb増加により酸素運搬が障害され、通常のパルスオキシメーターではSpO2が偽正常となることがある。
低酸素血症に意識障害、呼吸疲弊、著明なチアノーゼ、ショック、低血圧、胸痛、片側呼吸音消失、突然の呼吸困難、頻呼吸、SpO2の急激な低下を伴う場合は、重症呼吸不全、肺血栓塞栓症、緊張性気胸、急性肺水腫、ARDS、重症肺炎など生命を脅かす病態を考える。直ちに酸素投与を開始し、ABC評価と救急対応を行う。
低酸素血症は『肺胞低換気』『換気血流比(V/Q)不均衡』『右左シャント』『拡散障害』『低吸入酸素』の5つの機序に分類することが最重要である。『V/Q不均衡は酸素で改善』『シャントは酸素で改善しにくい』『低換気ではPaCO2上昇・A-aDO2正常』は国家試験・CBT頻出事項である。また、『低酸素血症(PaO2低下)』と『組織低酸素症(hypoxia)』は異なる概念であり、貧血や一酸化炭素中毒ではPaO2が正常でも重篤な組織低酸素を来すことを理解しておくことが重要である。
医学部生・医療系学生による編集チーム。CBT・国家試験対策・学習効率化に関する実体験と医学教育知見に基づいた情報を発信。
都内私立大学医学部卒業。現在は都内基幹病院にて初期研修中。学生時代はCBT・国試対策に注力し、学習法に関する情報発信にも関心を持つ。