下腿浮腫は、膝より遠位の下肢に間質液が貯留して腫脹した状態である。心不全、静脈うっ滞、深部静脈血栓症、腎疾患、薬剤などで生じる。
身体徴候
下腿浮腫(lower leg edema)は、毛細血管内静水圧の上昇、血漿膠質浸透圧の低下、毛細血管透過性亢進、リンパ流障害などにより下腿の間質液が増加することで生じる。立位では重力によって静水圧が高くなるため、浮腫は足背や下腿に出現しやすい。心不全では静脈圧上昇、腎疾患ではNa・水貯留や低アルブミン血症、肝硬変では低アルブミン血症と門脈圧亢進、慢性静脈不全では静脈うっ滞、リンパ浮腫ではリンパ還流障害が主な機序となる。カルシウム拮抗薬では前毛細血管細動脈の拡張により毛細血管内圧が上昇し、薬剤性浮腫を生じる。
まず片側性か両側性か、急性発症か慢性経過かを確認する。疼痛、熱感、発赤、発熱、外傷歴、呼吸困難、起坐呼吸、体重増加、尿量変化、服薬歴(特にCa拮抗薬、NSAIDs、チアゾリジン薬など)を聴取する。身体診察では両下腿周径を同一部位で測定し、圧痕性(pitting)か非圧痕性(non-pitting)か、皮膚色、色素沈着、静脈瘤、潰瘍、皮膚硬化、足背浮腫、末梢動脈拍動を評価する。全身診察では頸静脈怒張、心音、肺ラ音、腹水、肝腫大を確認し、必要に応じて尿検査、腎機能、肝機能、血清アルブミン、BNP、心エコー、下肢静脈エコーを実施する。深部静脈血栓症(DVT)が疑われる場合はWellsスコアなどで臨床確率を評価し、Dダイマーや静脈超音波検査を選択する。
片側性浮腫では深部静脈血栓症、リンパ浮腫、蜂窩織炎、外傷、静脈閉塞を優先して考える。両側性浮腫では心不全、慢性腎臓病、ネフローゼ症候群、肝硬変、薬剤性浮腫、慢性静脈不全が代表的である。心不全では対称性浮腫に加え、頸静脈怒張、呼吸困難、BNP上昇を伴う。慢性静脈不全では夕方に悪化し、色素沈着、静脈瘤、うっ滞性皮膚炎を認める。リンパ浮腫では足背まで腫脹し、慢性化すると非圧痕性となりStemmer徴候が陽性となることが多い。カルシウム拮抗薬(アムロジピンなど)は代表的な薬剤性下腿浮腫の原因である。
急性片側性下腿浮腫に疼痛、熱感、発赤、周径差を伴う場合は深部静脈血栓症(DVT)を強く疑う。さらに胸痛、呼吸困難、頻脈、低酸素血症、失神を伴う場合は肺血栓塞栓症(PE)の可能性があり、緊急評価・治療が必要である。両側性浮腫に起坐呼吸、肺うっ血、低酸素血症、頸静脈怒張を伴う場合は急性心不全を考える。急速な全身浮腫と高度蛋白尿ではネフローゼ症候群、乏尿・高血圧を伴えば急性糸球体腎炎も重要な鑑別となる。
下腿浮腫では『片側性か両側性か』が鑑別の第一歩である。急性片側性浮腫では深部静脈血栓症(DVT)を最優先に考え、両側性浮腫では心不全、腎疾患、肝硬変、薬剤性浮腫を鑑別する。『圧痕性浮腫=心不全・腎疾患・静脈不全』『非圧痕性浮腫=リンパ浮腫・甲状腺機能低下症』という整理は国家試験・CBT頻出事項である。慢性静脈不全では夕方増悪・色素沈着・静脈瘤、DVTでは急性発症・疼痛・熱感・周径差を認める。Homans徴候は感度・特異度とも低く、DVTの診断や除外には推奨されないことも重要である。
医学部生・医療系学生による編集チーム。CBT・国家試験対策・学習効率化に関する実体験と医学教育知見に基づいた情報を発信。
都内私立大学医学部卒業。現在は都内基幹病院にて初期研修中。学生時代はCBT・国試対策に注力し、学習法に関する情報発信にも関心を持つ。