起立性低血圧は、臥位または座位から立位へ移った際に血圧が持続的に低下する身体所見である。めまい、眼前暗黒感、脱力、失神、転倒を生じ、高齢者、自律神経障害、脱水、薬剤使用者で重要となる。
身体徴候
起立性低血圧(orthostatic hypotension)は、起立によって約500〜1000mLの血液が下肢や内臓静脈系へ貯留し、静脈還流と心拍出量が一過性に低下することで生じる。正常では頸動脈洞・大動脈弓の圧受容体反射(baroreflex)により交感神経活動が亢進し、心拍数増加、心収縮力増強、末梢血管収縮によって血圧が維持される。脱水、出血、利尿薬、降圧薬、長期臥床、高齢、糖尿病性自律神経障害、Parkinson病、多系統萎縮症などではこの代償機構が破綻し、起立時に脳血流が低下してめまい、眼前暗黒感、失神を生じる。神経原性起立性低血圧では血圧低下に対する心拍数増加が乏しいことが特徴である。
転倒防止のため介助者を配置し、患者を5分以上安静臥位とした後に血圧・脈拍を測定する。その後、安全に起立させ、起立直後、1分後、3分後を目安に血圧・脈拍を再測定し、めまい、眼前暗黒感、ふらつき、脱力感、失神前症状の有無を確認する。診断基準は『起立後3分以内に収縮期血圧20mmHg以上または拡張期血圧10mmHg以上低下』である。飲水量、脱水症状、出血歴、発熱、糖尿病、Parkinson病、自律神経疾患、服薬歴(降圧薬、利尿薬、α遮断薬、抗精神病薬、抗うつ薬など)を確認する。必要に応じて能動起立試験やヘッドアップティルト試験、自律神経機能検査を行う。
脱水や出血による起立性低血圧では頻脈が目立つのに対し、神経原性起立性低血圧では心拍数増加が乏しい。血管迷走神経性失神は疼痛、恐怖、長時間立位などが誘因となり、悪心、冷汗、徐脈を伴うことが多い。体位性頻脈症候群(POTS)は起立時の著明な心拍数増加(30回/分以上または120回/分以上)が主体で、血圧低下は必須ではない。良性発作性頭位めまい症(BPPV)は頭位変換で回転性めまいと眼振を生じるが、血圧低下は認めない。
起立時症状に胸痛、持続する動悸、労作時失神、局所神経症状、著明な徐脈・頻脈、黒色便、吐血、大量出血、重度脱水を伴う場合は、単純な起立性低血圧ではなく心原性失神、不整脈、大動脈弁狭窄症、急性冠症候群、消化管出血、脳血管障害などを考え、緊急評価を行う。反復する転倒、頭部外傷、失神後の意識障害や症状遷延も速やかな原因検索を要する。
起立性低血圧は『起立後3分以内に収縮期血圧20mmHg以上または拡張期血圧10mmHg以上低下』が診断基準である。原因は『脱水・出血・薬剤・自律神経障害』を基本として整理する。神経原性では心拍数増加が乏しく、糖尿病性自律神経障害、Parkinson病、多系統萎縮症などを考える。一方、脱水では頻脈を伴うことが多い。国家試験・CBTでは起立性低血圧とPOTS、血管迷走神経性失神との鑑別、糖尿病性自律神経障害やParkinson病との関連が頻出である。高齢者では転倒・骨折の重要な原因となるため、段階的離床や弾性ストッキング、水分・塩分補給などの非薬物療法も重要である。
医学部生・医療系学生による編集チーム。CBT・国家試験対策・学習効率化に関する実体験と医学教育知見に基づいた情報を発信。
都内私立大学医学部卒業。現在は都内基幹病院にて初期研修中。学生時代はCBT・国試対策に注力し、学習法に関する情報発信にも関心を持つ。