心膜摩擦音は、炎症により粗造化した臓側心膜と壁側心膜が心拍に伴って擦れ合うことで生じる、高調で擦過性の付加音である。急性心膜炎に特徴的で、胸骨左縁で前傾姿勢にすると聴取しやすい。
身体徴候
正常な心膜腔には少量の液体が存在し、臓側心膜と壁側心膜は滑らかに移動する。ウイルス感染、心筋梗塞後、尿毒症、自己免疫疾患、心臓手術後、悪性腫瘍などで心膜に炎症とフィブリン析出が生じると、粗造化した心膜面が心拍ごとに擦れ、摩擦音を生じる。典型的には心房収縮、心室収縮、心室急速充満に対応する三相性だが、実際には一相性または二相性として聴取されることも多い。音は心拍に同期し、表在性で、雪を踏む音や革が擦れる音に例えられる。心嚢液が大量に貯留して心膜面が離れると摩擦音が消失することがあるため、音の消失は炎症改善を必ずしも意味しない。
患者を座位で前傾させ、呼気終末に息を止めてもらい、胸骨左縁第3から5肋間を聴診器の膜面で聴取する。聴診器をやや強く押し当てると表在性の音を捉えやすい。仰臥位、座位、前傾姿勢で反復し、心周期のどの時相に音があるか確認する。頸動脈拍動で収縮期を同定し、収縮期のみか、拡張期にも成分があるかを記録する。呼吸を一時停止しても音が残ることを確認すると胸膜摩擦音との鑑別に役立つ。胸痛の体位・呼吸との関係、発熱、先行感染、腎不全、心筋梗塞、薬剤歴を確認する。心電図で広範なST上昇・PR低下、心エコーで心嚢液と心タンポナーデ所見、血液検査で炎症反応・心筋障害を評価する。
胸膜摩擦音は呼吸運動に同期し、息を止めると消失する。心膜摩擦音は心拍に同期し、呼吸停止中も残る。僧帽弁・大動脈弁雑音は特定の弁領域と放散を示し、擦過性ではない。心膜摩擦音は三相性が典型だが、一相性でも急性心膜炎を否定できない。心嚢液増加に伴い摩擦音が消失しても、頸静脈圧上昇や低血圧が出現した場合は心タンポナーデへの進行を疑う。
医学部生・医療系学生による編集チーム。CBT・国家試験対策・学習効率化に関する実体験と医学教育知見に基づいた情報を発信。
都内私立大学医学部卒業。現在は都内基幹病院にて初期研修中。学生時代はCBT・国試対策に注力し、学習法に関する情報発信にも関心を持つ。