気管偏位は、頸部または胸郭内で気管が正中から左右いずれかへ移動した所見である。肺容量が減少する無気肺・線維化では病変側へ、緊張性気胸や大量胸水など胸腔内圧・容積が増大する病態では反対側へ偏位することがある。
身体徴候
気管は縦隔内で周囲組織から牽引・圧排を受ける。閉塞性無気肺、肺切除後、片側肺線維化では病変側の肺容量が減少し、縦隔と気管が病変側へ引かれる。緊張性気胸では胸膜腔内圧が上昇し、患側肺虚脱と縦隔圧排によって気管が健側へ偏位する。大量胸水、大きな腫瘤、縦隔腫瘍でも健側へ圧排され得る。上縦隔や甲状腺の腫瘤では頸部気管が局所的に偏位する。気管偏位は病態が進行した段階で明瞭になることが多く、特に緊張性気胸で偏位がないからといって否定はできない。
患者を正面から観察し、頭頸部を正中位にする。胸骨上窩で気管軟骨を触知し、左右の胸鎖乳突筋や鎖骨頭との距離を比較する。診察者の指を気管と胸鎖乳突筋の間へ入れ、左右差を確認する方法もある。頸部の手術痕、甲状腺腫、腫瘤も観察する。胸郭左右差、呼吸音、打診音、触覚振盪、頸静脈怒張、血圧、SpO2を同時に評価する。偏位方向だけで原因を決めず、容量減少か圧排かを胸部X線、肺超音波、CTで確認する。救急では緊張性気胸を疑う臨床所見がそろえば、画像検査より処置を優先する。
無気肺では気管・縦隔が病変側へ偏位し、患側胸郭容量が減少する。緊張性気胸や大量胸水では健側へ偏位し、患側胸郭が膨隆することがある。単純気胸では偏位が目立たない場合が多い。胸郭変形、脊柱側弯、頭部回旋によって見かけ上の偏位が生じることがある。甲状腺腫による偏位は慢性で、胸部急性所見を欠くことが多い。
医学部生・医療系学生による編集チーム。CBT・国家試験対策・学習効率化に関する実体験と医学教育知見に基づいた情報を発信。
都内私立大学医学部卒業。現在は都内基幹病院にて初期研修中。学生時代はCBT・国試対策に注力し、学習法に関する情報発信にも関心を持つ。