板状硬は、腹壁が板のように硬く緊張し、呼吸や患者の意思によっても弛緩しない高度の腹膜刺激所見である。消化管穿孔、汎発性腹膜炎、腹腔内出血などを強く示唆し、緊急外科評価を要する。
身体徴候
消化管内容、胃酸、胆汁、膵液、膿、血液などが腹腔内へ漏出し、壁側腹膜が広範に刺激されると、体性神経反射によって腹壁筋が強く持続的に収縮する。炎症部位を動かさないための防御反応が腹部全体へ及ぶと、腹壁は平坦または陥凹し、板のように硬くなる。胃・十二指腸潰瘍穿孔、虫垂・憩室穿孔、腸管壊死、外傷性消化管損傷、汎発性腹膜炎が代表原因となる。腹腔内出血でも血液による腹膜刺激で硬直を生じることがある。板状硬は筋性防御の最重症形と考えられるが、発症早期、後腹膜病変、極端な肥満、高齢者、意識障害、免疫抑制状態では明瞭でない場合がある。逆に著しい不安や全身性筋緊張が硬さとして感じられることもあるため、臨床経過と循環状態を統合する。
患者を仰臥位とし、膝を曲げ、静かな環境で腹壁を観察する。板状硬が疑われる場合は、強い深部触診や反跳痛検査を反復せず、手掌を腹壁へ軽く置いて持続的な硬さ、左右差、呼吸性弛緩の有無を確認する。正常腹壁や随意性防御では呼気時に弛緩するが、板状硬では吸気・呼気を通じて硬い。患者は体動で痛みが増すため、膝を曲げて静止し、浅い呼吸をしていることが多い。血圧、脈拍、呼吸数、体温、意識、皮膚冷感、尿量を直ちに評価する。採血では血算、炎症反応、電解質、腎機能、血液ガス、乳酸、凝固、血液型を確認する。立位胸腹部X線やCTで遊離ガス、腹水、穿孔部位、虚血を評価するが、循環不安定例では蘇生と外科相談を優先する。妊娠可能年齢では妊娠反応も行う。
板状硬は不随意かつ持続的で、腹部全体が硬く、呼気時にも弛緩しない。局所性筋性防御は病変周囲に限局する。随意性防御は不安や寒さで生じ、膝屈曲、注意転換、呼気時に緩む。破傷風、神経疾患、激しい全身性筋緊張でも腹壁が硬くなることがあるが、急性腹痛や腹膜刺激所見との関係が異なる。急性膵炎など後腹膜病変では激痛でも典型的板状硬を欠く場合がある。
医学部生・医療系学生による編集チーム。CBT・国家試験対策・学習効率化に関する実体験と医学教育知見に基づいた情報を発信。
都内私立大学医学部卒業。現在は都内基幹病院にて初期研修中。学生時代はCBT・国試対策に注力し、学習法に関する情報発信にも関心を持つ。