反跳痛は、腹壁をゆっくり圧迫した後に急に手を離した際、圧迫中よりも強い痛みが誘発される所見である。壁側腹膜の炎症を示唆する腹膜刺激徴候の一つだが、検査による苦痛が大きいため反復せず、咳嗽痛や打診痛も活用する。
身体徴候
壁側腹膜に炎症があると、腹膜は伸展や急な移動に対して強い痛みを生じる。腹壁をゆっくり圧迫すると腹腔内臓器と腹膜が徐々に変位するが、手を急に離すと腹壁と腹膜が急速に元の位置へ戻り、炎症部位へ牽引刺激が加わる。このため解除時に強い疼痛が誘発される。急性虫垂炎、消化管穿孔、憩室炎、胆囊炎、骨盤内炎症、腹腔内出血など、壁側腹膜へ刺激が及ぶ病態でみられる。炎症が局所に限局していれば局所性反跳痛、腹腔全体へ広がれば汎発性反跳痛となる。高齢者、免疫不全者、ステロイド使用者では腹膜炎があっても所見が弱い場合がある。反跳痛は腹膜炎の可能性を高めるが、感度・特異度はいずれも完全ではなく、陰性だけで腹膜炎を否定できない。
反跳痛の検査は通常の表在・深部触診の後に、必要な部位で一度だけ行う。患者へ検査で一時的に痛みが増す可能性を説明し、疼痛が最も強い場所を避けて近傍から評価する。手掌または指腹で腹壁を数秒かけてゆっくり圧迫し、その後すばやく解除する。圧迫時と解除時のどちらが強く痛むかを確認し、解除時疼痛が明らかに強ければ陽性とする。患者の表情、呼吸停止、逃避動作、腹筋緊張も観察する。強い疼痛や既に明らかな筋性防御・板状硬がある場合は、検査を省略してよい。咳嗽、軽い腹部打診、ベッドを揺らす動作、歩行時の振動で痛みが誘発されるかを確認すれば、過度な苦痛を与えず腹膜刺激を評価できる。血圧、脈拍、体温、意識、腹部膨隆、腸雑音を併せて評価し、必要に応じて血液検査、妊娠反応、超音波、造影CTを行う。
筋性防御は触診に対する不随意な腹筋収縮で、反跳痛は圧迫解除時の疼痛である。板状硬は腹壁が持続的に硬くなる高度の腹膜刺激所見である。腹壁由来の疼痛でも急な動作で痛むことがあるが、腹膜炎では咳嗽・振動・打診でも痛みが誘発されやすい。機能性腹痛や不安による随意性防御では、患者の注意をそらす、膝を曲げる、呼気時に触診することで緊張が軽減することがある。
医学部生・医療系学生による編集チーム。CBT・国家試験対策・学習効率化に関する実体験と医学教育知見に基づいた情報を発信。
都内私立大学医学部卒業。現在は都内基幹病院にて初期研修中。学生時代はCBT・国試対策に注力し、学習法に関する情報発信にも関心を持つ。