百日咳菌はヒトの気道上皮に付着し、百日咳毒素などによって長期間続く発作性咳嗽、吸気性笛声、咳込み後嘔吐を起こす小型グラム陰性球桿菌である。乳児では咳が乏しく、無呼吸やチアノーゼのみのことがある。([病気予防管理センター][7])
Bordetella pertussis
細菌
非常に小さいグラム陰性球桿菌で、臨床検体の直接Gram染色では確認しにくい。
Bordetella属に属するヒト特異的病原菌である。病原性遺伝子はBvgAS二成分制御系によって発現調節される。
偏性好気性、非運動性、非芽胞形成性の栄養要求性球桿菌である。通常培地には発育しにくく、Bordet-Gengou培地やRegan-Lowe培地などの専用培地を用いる。
自然宿主はヒトのみである。典型症状の小児だけでなく、ワクチン免疫が減衰して軽い長引く咳だけを示す青年・成人が乳児への感染源となる。
咳やくしゃみで生じる飛沫、気道分泌物との直接接触で伝播する。感染力はカタル期から咳発作初期に特に強く、家庭、学校、医療施設で集団感染を起こす。
線維状赤血球凝集素、パータクチン、線毛が線毛上皮へ付着する。百日咳毒素はGi蛋白をADPリボシル化して細胞内cAMPを増加させ、リンパ球増多や免疫調節異常を起こす。アデニル酸シクラーゼ毒素は食細胞機能を抑制し、気管細胞毒素は線毛上皮を障害する。
カタル期、痙咳期、回復期の三期を経る百日咳を起こす。痙咳期には連続する咳発作、吸気性笛声、咳込み後嘔吐がみられる。乳児では無呼吸、チアノーゼ、肺炎、痙攣、脳症を起こし、著明な白血球増多と肺高血圧を伴う重症例がある。青年・成人では吸気性笛声を欠く遷延性咳嗽として発症しやすい。
発症早期は鼻咽頭ぬぐい液または鼻咽頭吸引液を用いた核酸増幅検査と培養が有用である。培養は特異度が高いが、抗菌薬投与後や発症後時間が経過すると感度が低下する。発症後数週間を経た症例では血清抗体検査を補助的に用いる。末梢血の白血球増多とリンパ球優位は乳幼児の典型所見である。
アジスロマイシン、クラリスロマイシン、エリスロマイシンなどのマクロライド系を用い、使用困難な場合はST合剤を検討する。カタル期の早期治療は症状軽減が期待できるが、痙咳期に入った後は毒素による症状が続くため、主な目的は排菌停止と周囲への感染防止となる。乳児は呼吸状態、無呼吸、栄養、肺高血圧を慎重に管理する。マクロライド耐性株の報告があるため、治療反応不良時には検査機関と連携する。([病気予防管理センター][8])
国内では百日咳成分を含む五種混合ワクチンなどを定期接種する。ワクチン接種後や自然感染後も免疫は生涯持続しないため、年長児・成人が感染源となりうる。重症化リスクの高い乳児、妊婦、基礎疾患患者とその濃厚接触者には曝露後予防投与を検討する。患者には適切な抗菌薬開始後5日間程度まで飛沫予防策を行う。百日咳は国内の5類全数把握対象である。([病気予防管理センター][9])
百日咳毒素はGi蛋白を不活化してcAMPを増加させ、リンパ球増多を起こす。症状はカタル期、痙咳期、回復期に分かれ、感染力は軽い感冒症状だけのカタル期に最も強い。乳児では典型的な咳やwhoopを示さず、無呼吸が主症状となる。診断検体は咽頭ではなく鼻咽頭から採取する。
医学部生・医療系学生による編集チーム。CBT・国家試験対策・学習効率化に関する実体験と医学教育知見に基づいた情報を発信。
都内私立大学医学部卒業。現在は都内基幹病院にて初期研修中。学生時代はCBT・国試対策に注力し、学習法に関する情報発信にも関心を持つ。