樽状胸郭は、胸郭の前後径が増大し、側面から丸みを帯びた樽状に見える形態所見である。肺気腫を中心とする慢性肺過膨張で典型的だが、加齢や体格でもみられるため、単独ではCOPDを確定できない。
身体徴候
肺気腫では肺胞壁破壊と弾性収縮力低下によって呼気時に末梢気道が虚脱し、空気が肺内へ残る。残気量・機能的残気量が増加して肺が慢性的に過膨張すると、肋骨は水平化し、胸骨と脊柱の距離が増え、横隔膜は平坦化する。胸郭は吸気位に近い状態で固定され、前後径が増大する。胸郭容積は大きいが、追加吸気に利用できる予備容積は小さく、呼吸運動幅は低下する。長期の重症喘息や嚢胞性肺疾患でも過膨張が関与することがある。高齢者では肋軟骨変化や脊柱後弯によって類似した形態を呈する。
患者を立位または座位とし、正面と側面から胸郭形態を観察する。前後径と横径の比、肋骨の走行、肋間腔、胸骨角、肩甲帯、脊柱後弯を確認する。呼吸時の胸郭拡張、呼気延長、口すぼめ呼吸、補助筋使用、三脚位を観察する。打診で過共鳴音、聴診で呼吸音減弱・呼気延長・wheezesを確認する。喫煙歴、労作時呼吸困難、慢性咳嗽、喀痰、増悪歴を聴取し、診断にはスパイロメトリーで気流閉塞を確認する。胸部X線・CTでは肺過膨張、横隔膜平坦化、透過性亢進を評価する。
肺気腫では樽状胸郭に加えて両側過共鳴音、呼吸音減弱、呼気延長、口すぼめ呼吸がみられる。加齢性変化では明確な気流閉塞や重い呼吸症状を欠く場合がある。脊柱後弯では胸郭形態が変化するが、必ずしも前後径増大や肺過膨張を伴わない。急性喘息では一時的過膨張があっても、慢性的な樽状変形は重症・長期例を除き目立たない。漏斗胸や鳩胸は局所的胸骨形態が異なる。
医学部生・医療系学生による編集チーム。CBT・国家試験対策・学習効率化に関する実体験と医学教育知見に基づいた情報を発信。
都内私立大学医学部卒業。現在は都内基幹病院にて初期研修中。学生時代はCBT・国試対策に注力し、学習法に関する情報発信にも関心を持つ。