声音振盪低下は、発声による胸壁の振動が周囲や対側より弱く触知される身体所見である。胸水、気胸、主気管支閉塞、閉塞性無気肺、肺気腫など、音声振動の発生部位から胸壁までの伝達が遮られる病態を示唆する。
身体徴候
音声振動は気管支から肺実質を通って胸壁へ伝わるため、その経路に空気や液体が介在する、気道が閉塞する、肺への換気が減少すると弱くなる。胸水では胸膜腔内の液体が肺と胸壁を隔て、液体貯留部の振動伝達が低下する。気胸では胸膜腔内の空気と肺虚脱によって振動が胸壁へ届きにくくなる。主気管支を異物、腫瘍、粘液栓が閉塞すると、病変より末梢へ音声振動が伝わらず、閉塞性無気肺でも低下する。肺気腫では過膨張した肺に含まれる空気が音を減衰させるため、両側びまん性に弱くなる。肥満、厚い胸壁、乳房、筋肉、弱い発声も見かけ上の低下を生じる。
患者を座位とし、手掌基部または尺側縁を左右対称部位へ交互に置く。患者に同じ強さで一定の言葉を繰り返し発声してもらい、前胸部、側胸部、背部を上から下へ比較する。発声の強さが一定か、衣服や胸壁の厚さに左右差がないか確認する。低下部位では呼吸音、胸郭運動、打診音、気管位置を評価する。低下と濁音なら胸水、低下と過共鳴なら気胸、低下と容量減少・気管の患側偏位なら閉塞性無気肺を考える。人工呼吸管理中や挿管直後に片側性低下を認めた場合は片肺挿管、粘液栓、気胸を直ちに確認する。必要に応じて胸部X線、肺超音波、CT、気管支鏡へ進む。
胸水では声音振盪低下、打診濁音、呼吸音低下が典型である。気胸では低下、過共鳴音、呼吸音消失を認める。閉塞性無気肺では気道閉塞のため低下し、胸郭容量減少や患側への縦隔偏位を伴う。肺気腫では両側びまん性低下、樽状胸郭、呼気延長がみられる。肺炎の浸潤では通常増強するが、気管支閉塞や大量胸水が併存すると低下する。肥満や弱い声による低下は両側性で、明確な打診・聴診異常を欠くことが多い。
医学部生・医療系学生による編集チーム。CBT・国家試験対策・学習効率化に関する実体験と医学教育知見に基づいた情報を発信。
都内私立大学医学部卒業。現在は都内基幹病院にて初期研修中。学生時代はCBT・国試対策に注力し、学習法に関する情報発信にも関心を持つ。