II音固定性分裂は、II音を構成する大動脈弁閉鎖音と肺動脈弁閉鎖音の間隔が広く、吸気・呼気でほとんど変化しない所見である。心房中隔欠損症に典型的で、右室への持続的容量負荷によって肺動脈弁閉鎖が遅れる。
身体徴候
II音は大動脈弁閉鎖音A2と肺動脈弁閉鎖音P2からなる。正常では吸気時に胸腔内圧が低下し、右心系への静脈還流が増えるため右室駆出時間が延長し、P2が遅れて分裂が広がる。呼気時には分裂が狭くなる。心房中隔欠損症では左房から右房への短絡により右室への血流が持続的に増加し、右室駆出時間が延長する。吸気時には体静脈還流が増える一方、左房から右房への短絡量が減少し、呼気時には体静脈還流が減る一方、左から右への短絡量が増えるため、右室充満量の呼吸性変動が相殺される。その結果、A2とP2の間隔が呼吸にかかわらずほぼ一定となる。肺動脈弁狭窄や右脚ブロックでも分裂は広がるが、通常は呼吸性変動が残る。
患者を座位または仰臥位とし、胸骨左上縁の第2肋間付近を聴診器の膜面で聴取する。通常呼吸、深吸気、呼気終末でA2とP2の間隔が変化するか確認する。A2は広い範囲で聴取されるが、P2は肺動脈弁領域で最も明瞭となる。心拍が速い場合は分裂の判定が難しくなるため、複数呼吸周期で確認する。心房中隔欠損症では胸骨左上縁の収縮期駆出性雑音、胸骨左下縁の三尖弁相対的狭窄による拡張期雑音、右室拍動を併せて評価する。心電図では不完全右脚ブロックや右軸偏位、心エコーでは中隔欠損、短絡方向、右房・右室拡大、肺動脈圧を確認する。
正常の生理的分裂は吸気で広がり呼気で狭くなる。右脚ブロック、肺動脈弁狭窄症ではwide splittingとなるが、呼吸性変動が保たれる。大動脈弁閉鎖が遅れる左脚ブロックや重症大動脈弁狭窄症では、呼気時に分裂し吸気で狭くなる奇異性分裂を示す。固定性分裂は心房中隔欠損症に強く関連するが、音が聞き取りにくい場合は心エコーで確認する。進行した肺高血圧ではP2が著明に亢進し、分裂が目立たなくなる場合がある。
医学部生・医療系学生による編集チーム。CBT・国家試験対策・学習効率化に関する実体験と医学教育知見に基づいた情報を発信。
都内私立大学医学部卒業。現在は都内基幹病院にて初期研修中。学生時代はCBT・国試対策に注力し、学習法に関する情報発信にも関心を持つ。