奔馬調律は、I音・II音にIII音またはIV音が加わり、頻脈下で馬の駆け足のような三拍子として聴取される心音である。III音性、IV音性、両者が融合するsummation gallopがあり、成人では心不全や心室コンプライアンス低下を示す重要所見となる。
身体徴候
通常の心音はS1とS2による二拍子であるが、拡張早期のS3または拡張末期のS4が加わり、心拍数が増加すると三拍子が強調される。S3 gallopは、拡張早期の急速流入時に容量負荷や拡張した心室が振動して生じ、左室収縮不全、拡張型心筋症、重症僧帽弁逆流などでみられる。S4 gallopは、拡張末期に心房が硬い心室へ血液を押し込むことで生じ、高血圧性左室肥大、心筋虚血、大動脈弁狭窄症などでみられる。頻脈により拡張期が短縮するとS3とS4が接近して一つの強い音へ融合し、summation gallopとなる。左室由来は心尖部、右室由来は胸骨左下縁で聴取され、右室性では吸気時に増強しやすい。小児や若年者のS3は生理的なことがあるが、成人の頻脈性奔馬調律は病的意義が高い。
患者を左側臥位とし、心尖部へ聴診器のベル面を軽く当てる。心音の時相を頸動脈拍動や心尖拍動で確認し、S2後のS3か、S1前のS4かを区別する。胸骨左下縁でも聴診し、吸気による増強があれば右室性を考える。心拍が速くS3とS4の判別が困難な場合は、心拍数が低下した後に再評価する。必要に応じて心電図と同時に確認し、S4はP波後、S3はT波終了後の拡張早期に対応する。呼吸困難、起坐呼吸、頸静脈圧、浮腫、肺crackles、心尖拍動、心雑音を評価する。心エコーで心室収縮能・拡張能、心腔拡大、弁膜症を確認し、BNP、胸部画像を病態に応じて行う。
S3 gallopはS2直後の拡張早期、S4 gallopはS1直前の拡張末期に生じる。summation gallopでは頻脈のためS3とS4が融合し、心拍数低下で二つに分かれることがある。僧帽弁開放音は高調でS2後に聴取され、低周波のS3とは異なる。収縮期・拡張期雑音は一定時間持続する音で、短い付加心音による三拍子とは異なる。若年者の生理的S3では心不全徴候を欠く。
医学部生・医療系学生による編集チーム。CBT・国家試験対策・学習効率化に関する実体験と医学教育知見に基づいた情報を発信。
都内私立大学医学部卒業。現在は都内基幹病院にて初期研修中。学生時代はCBT・国試対策に注力し、学習法に関する情報発信にも関心を持つ。