胸膜摩擦音は、炎症で粗造化した臓側胸膜と壁側胸膜が呼吸運動に伴って擦れ合うことで生じる、きしむような非楽音性副雑音である。胸膜炎、肺炎、肺梗塞、悪性腫瘍などでみられ、胸膜痛を伴うことが多い。
身体徴候
正常な胸膜面は少量の胸水で潤滑され、呼吸時にほぼ無音で滑走する。胸膜炎、肺炎の胸膜波及、肺梗塞、尿毒症、悪性腫瘍などで胸膜表面にフィブリンや炎症性変化が生じると、臓側胸膜と壁側胸膜が擦れ、粗い断続性または連続性の摩擦音が生じる。音は胸壁直下で表在性に聞こえ、吸気と呼気の両方に出ることがある。胸水が増加して胸膜面が離れると、摩擦音は消失する場合がある。そのため音が消えたことが必ずしも炎症改善を意味しない。
胸膜痛を訴える部位を中心に、聴診器を皮膚へやや強めに密着させて聴診する。吸気・呼気のどちらで聴こえるか、局在、再現性を確認する。患者に一時的に呼吸を止めてもらい、音が消失するか確認する。心膜摩擦音は呼吸停止中にも残ることがあるため鑑別に有用である。咳嗽前後で変化するか、胸壁圧迫で音が変化するかも確認する。胸痛、発熱、呼吸困難、喀血、肺塞栓危険因子を評価し、胸部画像、炎症反応、肺塞栓検査を病態に応じて行う。
fine cracklesは主に吸気終末に肺内から聴こえ、胸膜摩擦音は表在性で吸気・呼気の両方に出やすい。coarse cracklesやrhonchiは咳で変化するが、胸膜摩擦音は変化しにくい。心膜摩擦音は心拍に同期し、呼吸停止中にも聴取され得る。衣服や胸毛の摩擦は聴診器位置の変更や皮膚への直接接触で消失する。胸水が大量になると胸膜摩擦音は消失し、呼吸音減弱と濁音が主体となる。
胸膜摩擦音に突然の胸膜痛、呼吸困難、頻脈、低酸素血症、喀血を伴う場合は肺塞栓・肺梗塞を疑う。高熱、低血圧、呼吸不全を伴えば重症肺炎や膿胸を考える。胸痛が呼吸停止中も続き、心膜摩擦音、広範なST上昇、低血圧を伴う場合は急性心膜炎や心タンポナーデを評価する。胸水増加で摩擦音が消失しても、呼吸困難が悪化していれば大量胸水を疑う。
胸膜摩擦音は炎症性胸膜面の摩擦で生じ、胸膜痛を伴うことが多い。吸気・呼気の両方に聴取され、呼吸停止で消失する。肺炎、肺塞栓・肺梗塞、胸膜炎が代表原因である。心膜摩擦音との鑑別では呼吸停止と心拍同期を確認する。
医学部生・医療系学生による編集チーム。CBT・国家試験対策・学習効率化に関する実体験と医学教育知見に基づいた情報を発信。
都内私立大学医学部卒業。現在は都内基幹病院にて初期研修中。学生時代はCBT・国試対策に注力し、学習法に関する情報発信にも関心を持つ。